『田園の詩』NO.76 「自給自作」 (1998.2.3)


 東京の何度も続く大雪をテレビニュースで見ながら、「こちら(大分県山香町)は、
元旦も雨、その後も毎日のように雨ばかりだなー」と女房と話し合っていたところ、
暦に合わせたように大寒の前日に寒波襲来で3センチほど雪が積もりました。

 それでも今冬は基本的には暖かいようです。そのため、初春に百花に先がけて咲
くという梅が、昨年末にはもう三分咲きになりました。南向きの山裾の畑に植えてあ
るとはいえ例年にはないことです。

 ちょうど、町の中心部に住んでいる友達が門松を作るために、孟宗竹を切って
玄関先に置いていたのを思い出したので、「梅ならウチに咲いているよ」と電話し
たら、すぐにやって来ました。

 松や熊笹も調達したいとのことだったので、場所を教えてあげました。「山には何
でもあるなあ。南天も沢山あった」と後日電話がありました。

 田舎では、お正月飾りを作るとき、業者に頼んだり買ったりすることは少なく、山
で自給した材料を使って自分たちで作ります。


     
     お正月頃から、我が家の周りは、早くも水仙が咲き始めます。
      凛として香り豊かです。    (09.1.5写)



 ところで、正式な門松に松竹梅を使い南天を添えていいものかどうか私は知りま
せん。年始に行ったら「松竹梅はおメデタイもの。南天は難を転じるという。どうだ
立派な門松だろ。」と友達は上機嫌でした。

 昔から、お正月飾りの材料には意味を持たせてきました。鏡餅に敷くウラジロは
「人間も裏を白くしなければいけない、正直であれ」と教えるために使います。橙や
ユズリ葉を添えるのは「子孫が代々譲り合って栄えるように」との願いが込められて
います。

 ある友達の家ではスルメが添えられていたので「これはどんな意味?」と尋ねたら、
「貧乏はするめエ」との答えが返って来ました。スルメに江戸弁で解釈する意味があっ
たのにはビックリしました。

 私たち田舎者は、材料を自給自作して見様見真似で形を整えます。正式な流儀など
知りません。それなら、形に込められた心をこのように解釈しても、それはそれで許さ
れることであり楽しくもあると思います。      (住職・筆工)

                  【田園の詩NO.】 【トップページ】